スタンドオフ。ラグビーでは司令塔と呼ばれることの多いポジションだ。それぞれのチームの10番を背負うスタンドオフの選手の特徴が、チームの色を決めると言っても過言ではないほど、ゲームマネジメントにおける役割は大きい。体の大きな選手や足の速い選手など、それぞれの武器を持つ14人の選手をうまく使ってあげるだけでなく、時には自分でもボールを持って切り裂いていく必要があるポジションで、一際輝く2年生の選手がいる。佐賀工業高校の後藤翔大だ。

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 翔大がラグビーと出会ったのは小学校2年生の春、自身も選手としてラグビーに励んだ父・哲也さんの知人がコーチを務めていた大分舞鶴クラブの体験練習に参加した。「最初はすごく怖くて、泣きながら逃げまわったりもしてました(笑)」と幼い頃を振り返るが、「続けていくうちに、試合でトライしたときの喜びとか、それまで習っていたサッカーとは違う面白さを感じるようになったんです」とますますラグビーの魅力にのめり込んでいった。

 小学生の頃からサッカー、野球、ハンドボール、ダンスなど様々な競技を経験した。特にサッカーは地域の選抜チームにも選出され楽しんでいたが、どこか自分に合ってないような気がした。それと同じ頃からラグビーの構造を少しずつ理解し始めたことでプレーするのが楽しくなり、次第に他の競技を「ラグビーに活かすため」に取り組むようになっていった。

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 中学入学後は、学校の部活動でハンドボールを続けながらも、MSA豊後RFCでより本格的にラグビーに取り組むようになった。入学直後は12人制ラグビーに馴染むのが難しく、成長期に入っていた周囲の選手と比べ、体格的にも劣っていたため引けを感じていた。しかし、中学2年時からは大分県選抜にも選出されるようになり、同級生と比べても目立てるようになってきたことから、少しずつ自信を積み重ねることができた。

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 そんな翔大にビッグチャンスが訪れたのは、まさに突然の出来事だった。中学3年の9月、日本協会から連絡が入り、男子セブンズユースアカデミーの強化合宿に招集されたのだ。それまで代表活動や選抜合宿など、全く参加したことのなかった翔大には新たなステージが待っていた。「本当に他の高校生がすごすぎて、自分がその場所にいるのが夢みたいというか、現実味がなかったです」と当時の鮮明な記憶を振り返る。

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東京都内のナショナルトレーニングセンターにて行われた同合宿について「スタッフも多いなって感じたし、何より競技以外でも食事のサポートがあったり、練習環境が整っていたり、上(のカテゴリー)に選ばれたらこんなにラグビーがしやすい環境を作ってもらえるんだな、って感じました」それまでもセブンズの経験はなかったものの、この合宿に参加した経験が翔大のラグビーへの姿勢を変えた。

 

 「もっと強いところでプレーして、上を目指したい」

 

その想いは強固なものだった。当時中学3年生だった翔大のもとには、大分県にある複数の高校から推薦入学の声がかかっていた。しかし、翔大は「県外に出た方がレベルの高いチームでラグビーができるし、高校卒業後の進路の幅が広がると思ったんです」と将来を見据え、生まれ育った大分を離れて、佐賀工業高校に進学することを決めた。

 

 

自らの意思で入学を決めた佐賀工業での1年目。翔大は上級生のレベルの高さに苦しんだ。「自分が思っていたよりも結構レベルが高かったし、2・3年生についていくので必死でした」特にコンタクトの部分で力の差を感じることが多く、自信のあったスキルをなかなか発揮できずに、もがく時期が続いた。

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 それでも秋シーズンからは少しずつペースを掴み始め、初年度の花園にも出場した。初めての大舞台は「めちゃくちゃ緊張して、自分の中ではうまくできなかったです」と翔大にとって印象深いものとなった。

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 スキルに自信があるのに、緊張して出せない。花園を終えて佐賀に戻った翔大は美兎から打開策を模索し始めた。初めての花園は会場に着いた瞬間からその場の雰囲気にのまれ、極度の緊張に陥った。この経験を踏まえ、翔大は普段の練習から適度な緊張感を持つため、新チームなってからは初めての花園思い出しながら練習に取り組むようになった。

その結果、春の全国選抜大会では余裕を持ってプレーすることができ「1年生の時は前が全然見えなかったけど、仕掛ける判断もできるようになりました」と成長を実感した。

 

 

 全国選抜を終えてからは「仕掛ける」ことを自分のフォーカスに選んだ。周囲の選手をうまく使うことと、パスを捌くだけの選手になるのは違う。コンタクトに苦手意識を持っている自分の課題を乗り越えるため、毎日の練習で少しずつ意識しながら練習に臨んだ。

 

 失敗からは必ず学ぶ。真面目にラグビーと向き合う翔大はすぐに手応えを掴む。今年6月、静岡遠征で戦った静岡高校選抜との一戦。この日も翔大は「自分で仕掛ける」イメージを持って試合に臨んだ。「抜けたシーンも抜けなかったシーンもあったんですけど、いつもよりもボールキャリーの回数は多かったかなと思います」実際に翔大の積極的に仕掛ける姿勢は数値にも現れていた。同時に「こんな感じにしたら抜けるんだなっていう発見もあって面白かったです」と、ラグビーを構造的に理解する力も伸びてきたことがとても大きな自信となった。

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 好調のまま迎えた今年の花園予選。他県の強豪校が3試合以上の予選を勝ち進む中、佐賀工業は毎年1試合。県内にラグビー部のある高校は2校しかないため、初戦が事実上の決勝戦となる。試合序盤は周りの選手にボールを散らすアタックを意識したが、目の前のスペースを見つけると一気に加速。「自分でギャップを仕掛けて抜けるシーンもあったし、オフロードで繋ぐシーンもあったからよかったです」と2度目の花園予選決勝を気持ちよく振り返った。結果は213-0の大勝。ラグビーでは見ることのない200点差以上のゲームとなった。

 残すは今シーズン最後の大舞台、花園。1年ぶりのステージに向けて「どんなチームが相手でも、ミスをせずにどれだけ点数を取れるかが勝負の分かれ目になってくると思います」と気を引き締める。そこには2年生とは思えないほどの落ち着きで、先を見据える翔大の姿があった。

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 「いまラグビーを頑張れているのは、大分から送り出してくれた人たちがいるからです」翔大にとって一番応援してくれている家族や、地元の友人たちの存在は大きい。

 

 「自分のことを応援してくれる人たちのために頑張ろうって思います」

 

 そんな人たちに見て欲しいのは、積極的にアタックを仕掛ける姿。「大きいフォワードの選手たちを動かしながらも、気付いたら自分が抜けているみたいな。スタンドオフとして周りを生かしながらも、自分で(ディフェンスの間を)切り込んで行ったり、仕掛けたりするところは大事にしたいです」

 

 昨年よりも多くの注目が集まるこの冬、翔大は全国ベスト4を目標に掲げるチームを牽引しながら「自分で仕掛けるラグビー」を体現する。

(敬称略)

 

文:ESC Academy

​画像:*本人提供

※一部他サイトからの引用含む

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ESC Academy 密着取材ドキュメント

後藤 翔大

SO

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〜 チームを前に出せる司令塔に 〜

佐賀工業

Shota Goto

仕掛けられる選手

Message

支えてくれる方々からのメッセージ

先輩・徳永優太さん

積み重ねてきた努力の成果を花園で

 僕が初めて会ったのは翔大が中学3年生の時でした。冬の全国大会が終わると佐賀工業に練習に顔を出してくれましたが、その時は線が細く、パススキルやキック力などで秀でていたものの中学生レベルでした。しかし、スキルトレーニングや自主ウエイトなどの努力を積み重ね、花園の第100回大会では1回戦から10番でレギュラーを掴み取っていました。1年生から物怖じせず堂々とプレーをする姿を見てとても成長を感じたのを覚えています。

 翔大は僕の前では普段から大人しかったですが、ラクビーの事や気になったことは積極的に質問をしていました。翔大とは一緒にパス練習やキック練習、コンタクト練習やアフター練習をペアのような形でやることが多く、ラグビー以外でも寮部屋が一緒だったので、たまに深夜翔大の疑問や悩み、僕の1,2年時の思い出など部屋で話したりもしていました。

 翔大を見ていると考えてラグビーをしていることがよく分かります。逆に考えすぎて上手くいってない時もありました。(笑)ラグビーセンスだけではなく、戦術理解度が高いのも翔大の強みの1つだと思っています。

 2回目の花園は「周りの方や仲間に感謝して楽しんでプレーして欲しい!」「花園見にいくね!頑張れ!!」

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先輩・永池海音さん

​花園で一緒に結果を残したい

 翔大とはよく食事やウエイトに一緒に行くんですが、いつもラグビーの話をしていて本当にラグビーが好きなんだなと思います。普段は大人しめな感じですけど、試合になったらスタンドオフとしてゲームコントロールしてくれるし、バックスをまとめてくれるので頼りになります。

 ウエイトでも出されたメニューだけではなく個人的に取り組んだり、体重管理もしっかり自分で考えていたり、苦手なコンタクトを克服しようと頑張っていたり、近くで見ているとチームのために真摯にラグビーと向き合っているなと感じました。そういう翔大の姿を見て自分も良い刺激になりますし、『翔大のためにも花園で一緒に結果を残したい』って思います。

 翔大の頑張ってきた姿を誰よりも知っているので今年の花園では大暴れしてほしいし、自分としても一緒にベスト8以上目指して頑張りたいです!

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