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 高校ラグビー界における東の横綱。桐蔭学園はこれまでも数多くのトップ選手を輩出してきた。より高いレベルでラグビーに励むため、遠方からの進学を希望する選手も多く、皆ラグビーと真剣に向き合う。今シーズン、スクラムハーフとしてチームのバイスキャプテンを任された小山田裕悟もその一人だ。桐蔭学園に入学してから、強豪校ならではの経験を積み、3年連続の日本一を目指す裕悟の努力を追った。

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 今年でラグビーを始めて13年。東京都府中市で生まれ、幼い頃から外で動き回っていることの多い元気な子どもだった。

 初めてラグビーボールに触れたのは、5歳の頃。地元の多摩ラグビースクールに足を運んだ。幼稚園の頃からはサッカーの練習にも通っており、はじめはサッカーの方が好きだったという。「(小さい頃は)あんまりルールもわかんなかったけど、楽しかったのは覚えています」と笑顔で振り返った。

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 中学からはラグビーに専念し、中学部にあたるR&Bラグビースクールでプレーを継続した。2年時からはU15枠で3年生とも試合に出場し、多くの経験を積んだ。特に印象に残っているのは、最後の秋の公式戦となった練馬ラグビースクールとの一戦。春季大会で勝っていた相手に予選ステージでは敗れたものの、最後の試合ではシャットアウトで圧勝。「中学最後の公式戦は圧倒して締めくくれたのでよかったです」と思い出が蘇る。

 さらに裕悟自身の活躍も評価され、東京都スクール選抜として全国ジュニア大会にも出場。初戦には勝利したものの、京都府と大阪府の選抜チームに敗れ、関西地方の選手たちとの実力差を感じた経験となった。

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 そんな裕悟が進学先の高校に選んだのは、神奈川県の桐蔭学園。他にも進学を迷っていた学校はいくつかあったが「中学も全国で負けたし、(高校では)全国で勝ちたくて、その中で一番強くて優勝できる場所として桐蔭を選びました」とその決意は固かった。

 

 高校入学後は、毎日ラグビーできることが楽しかった。レベルの高い上級生たちとの練習は、毎日が学びに溢れていた。夏に入ると厳しい夏合宿もあり、試合に出ながらもわからないことが多かったため、悩んだ時期も長かった。秋のシーズンに入った頃には少しずつ落ち着き、1年目の花園は観客席からチームを応援した。当時の3年生の主力選手を中心にチームは順調に勝利を重ね、この年に初めての単独優勝を達成。裕悟にとっても忘れられない大会となった。

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年度が変わった翌シーズンは、新型コロナウイルスの影響を受け、なかなか満足のいく全体練習ができない期間が続いた。裕悟自身は主にBチームでプレーしながら試合経験を積んでいたが、Bチームにも有力な3年生が多く、楽しくラグビーに取り組むことができた。「自分で考えるようになって悩むことも減ったので、ストレスなく一年を終えられました」と振り返った。「(監督やコーチに言われたことだけではなく)自分でもこういう風にプレーしたいとか考えるようになったら、どんどん楽しくなっていきました」と自らの成長も感じていた。

 

裕悟にとって大きなターニングポイントとなったのは、2年時の花園前に行われた常翔学園との練習試合だった。Bチームのメンバーとして、初めて常翔と戦ったこの日、試合内容で常翔学園のBチームを圧倒し、結果を残すことができた。この試合に勝ったことが裕悟にとっても大きな自信となり「相手が強くてもビビることなく思いっきりやれば、意外と戦えるんだな、って感じました。自分のプレーも良くなるし、さらに頑張ってやっていこうって思えました」

 

この年の花園は、リザーブから試合にも出場した。1年前は観客席から見つめていた憧れのグラウンドで試合ができることに「緊張も多少はしてたけど、嬉しさの方が大きかった」と当時を思い出す。花園ラグビー場特有の強風の中、キックのエラーやいくつかのミスもあったが「初めてだったし、今となればいい思い出です(笑)」と振り返った。チームはこの年も順調に勝ち進み、決勝戦では京都成章を撃破。桐蔭学園史上初となる花園2連覇を達成し、歓喜に沸いた。

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 新チームとなって迎えた3年目。チームは苦しい状況からのスタートとなった。新型コロナウイルスの感染が全国で一気に拡大し、練習できない期間が続く。春の全国選抜にも出場が決まっていたが、十分な準備に割ける練習時間は確保できずにいた。

しかし、前年度の優勝経験メンバーを数人擁する桐蔭学園は、大会が始まると躍進を続けた。準決勝の天理戦も、自分たちの得意とするアタックで点数をしっかり重ねて勝利し、東福岡との決勝戦に挑んだ。この時点でチーム内には「意外とここまでこれた」という感覚があったが、春の東福岡は別格だった。前半序盤から激しいコンタクトを武器にするフォワード陣がゲインラインを破られ、先制点を許してしまう。フォワードの突破を中心に組み立てられた相手の流れを止めることは難しく、後半巻き返すも点差が埋まらず準優勝に終わった。

 試合を振り返って、裕悟は「マイボールをキープできなくて、アタックがうまくできませんでした。ハーフタイムで気合を入れ直して、後半は良くなったと思うんですけど、点差もついて折れちゃったって感じです」とチームが抱える課題に向き合っていた。

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 春の選抜を終えて、チームには全国優勝に向けた覚悟が再燃した。納得のいかない準備しかできなくても、試合になると実力が備わっていることは感じられたうえ、「選抜を終えて、『花園では勝ちたい』って思えるようになりました」と東福岡に対するリベンジの想いもこみ上げるようになった。

 

 

 秋シーズンに入って実力が試される花園予選決勝。相手は県内の強豪、東海大相模だった。決勝戦で実行したいプレーを少しずつ練習し、試合で出せるように準備した。初戦は全体的にもミスが多く、試合後は基礎に立ち返ることを選手たちの間で徹底して練習に臨んだ。それをきっかけに2試合目以降は締まったゲームとなった。決勝戦では、チームのゲームプランで、裕悟がスクラムハーフとして担う役割も大きかったが、落ち着いて試合を進めることができた。「(東海大相模との試合は)今までの相手と違ってレベルも一気に上がったし、きつい時間が長い試合でした。後半ずっと攻められていた場面で、相手のスクラムハーフが仕掛けてきて孤立したところでジャッカルに入れたのが良かったかな、と思います」と手応えを感じながら、先に控える全国大会を見据えた。

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 泣いても笑っても、今年の花園が裕悟にとって桐蔭学園のジャージで挑む最後の全国大会となる。最後の大会を目前に控えた裕悟に、桐蔭学園の魅力を聞いた。

 

 「先輩とかもレベルの高い人が多くいて、いい環境で自分のレベルを上げられたのはすごくよかったと思います。今年の夏も齋藤直人さん(=OB /現・東京サンゴリアス)とかも来てくれて、色々教えてもらいました」

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 高いレベルの選手が集まる刺激的な環境に身を置き、自身のレベルアップを図ろうとする選手は少なくない。実際に裕悟自身もその一人で確実な手応えを得ていた。

 

 裕悟にとってラグビーとは「自分が一番熱中できるもの」

 

「5歳からラグビー始めて、他にも色々なスポーツに取り組んできたけど、他は途中で飽きたりやめたりすることが多かった。それでもラグビーだけは今になるまで続けてこれてるし、ラグビーだけにしかない面白さを感じられてるのかな、って思います」

 

 自分を大きく成長させてくれた桐蔭学園への想いを、チームの目標である日本一達成のために思い切ってぶつける。チームへの恩をプレーで返すため、積み重ねた努力の成果を発揮する裕悟の活躍は必見だ。

(敬称略)

 

文:ESC Academy

​画像:*本人提供

※一部他サイトからの引用含む

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ESC Academy 密着取材ドキュメント

小山田 裕悟

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〜 自分を成長させてくれたチームへの想い 〜

桐蔭学園

Yugo Oyamada

成長できる場所

Message

支えてくれる方々からのメッセージ

チームメイト・相川拓也さん

最前線でチームを引っ張る存在

 自分がゆうごと初めて出会ったのは、高校に入学した時です。自分は、ゆうごにはその頃から自分たちにはないものを持っていると感じていました。時間が経つと共にゆうごは、上のチームでプレーするようになり、一緒にプレーすることが少なくなりました。

 しかし、自分も最高学年になると共に再びゆうごと一緒にプレーすることができるようになりました。その時のゆうごは、出会った時のゆうごとは違い、出会った時以上にリーダーシップと指示能力が上がり最前線でチームを引っ張っていく存在になっていました。今では、桐蔭学園では欠かせない存在で、大きな期待と信頼をチーム全体から得ています。

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中学時代の友人・福見豪太さん

裕悟の努力する姿がいい刺激

 4歳の頃から彼を知っていますが、その頃から彼の運動センスは凄まじかったです。サッカーや野球、何をやっても「十年に一度の逸材」と謳われ、一時期あだ名が「十年に一度」になるほどでした。ですが、彼は自分の才能にあぐらをかくことは一切ありませんでした。   

中学時代、平日はハンドボール部、週末にラグビーとハードな毎日を送っていたのにも関わらず、塾終わりにランニングをしたり、坂ダッシュをしたりと、努力を惜しみませんでした。高校入学後は、流石の彼もタフな練習で疲労を見せると思いましたが、そんなことはありません。唯一のオフ日はジムで過ごし、コロナ禍でもリモート筋トレという離れ業を見せるほどでした。彼の家ストイックさは常軌を逸していました。

才能と努力の権化のような彼ですが、僕が思う1番の魅力は人間性です。抜きん出た負けず嫌いで、自分の意思を絶対曲げない強さがあります。内から滲み出る優しさで彼の周りには自然と人が集まっていました。

僕はそんな彼に感化されて、中学で辞めたラグビーをまた始めようと、昨年ラグビー部がある高校に転学しました。普通科から工業高校への転学になり、高校1年生を2度過ごすという特殊な高校生活ですが、裕悟の努力する姿が良い刺激になっています。

高校ラグビー最後の年、悔いのないように全力でプレーしてください!

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