今年4月、全国の高校ラグビー選手は熊谷市で凌ぎを削った。新型コロナウイルスの影響を受け、各チームが例年よりも短い準備期間を強いられて臨んだ全国選抜大会。そんな中、圧倒的な力の差を見せつけた東福岡を5年ぶりの優勝に導いた司令塔が、全国から注目を集めた楢本幹志朗だった。決勝戦直後「大会を通して成長できたと思います」と清々しくインタビューに答える姿が印象に残る。

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 ラグビーと出会ったのは5歳。兄の鼓太郎(現・筑波大3年)が通っていた草ヶ江ラグビースクールの練習を見学しに行った際、優しいコーチの方が一緒に遊んでくれた。「ボールを追いかけて走り回るのが楽しかった」と笑顔で当時を振り返る。それから毎週日曜日は兄と2人で練習に通うのが恒例になった。小学校5年生から年上の選手たちとの試合にも出場するようになった。「この頃からラグビーに本気で取り組むようになったと思います」年上の選手が相手でも怯むことなく実力を発揮できたことが自信につながった。

 

 さらに、その才能はラグビーだけに留まらなかった。小学校から始めたサッカーでは2年生ながら6年生の試合に出場するなど、左利きという自身のアドバンテージを最大限に生かして活躍した。

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 中学入学後はラグビーに専念することを選び、草ヶ江ヤングラガーズでは1年時から試合に出場した。幹志朗の活躍はチーム内外を問わず評価され、3年時には福岡県選抜にも選出された。初めて出場した全国ジュニア大会も全試合スタメンで出場し、持ち前の高いスキルでチームを牽引する。順調にコマを進めた決勝戦では京都府中学校選抜との接戦を勝ち切り、有終の美を飾った。「全国から集まってくる強い選手たちが相手でも自分の実力が通用したと思います」この強い手応えが大きな決断を後押しする。「高校でももう一度同じ景色を見たい」そう強く感じた幹志朗は、より高いレベルでラグビーに励むことを決意し、東福岡高校への入学を決めた。

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 中学時代に全国制覇を成し遂げた幹志朗にとっても、県外からも多くの主力選手が集まる東福岡のラグビーは甘くなかった。「(入学直後は)ただ先輩についていくのに必死で、フィジカルでも劣っていたから悩んでいました」初めての15人制ラグビーでなかなかうまくいかないことも多く、悩む日々を繰り返した時期もあった。ラグビーが楽しくなくなっていた当時を「(ラグビーを)辞めようと思ったことはないけど、あの時期はちょっと離れたいなって思っていました」と振り返る。

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 そんな幹志朗が2シーズン目を迎えた昨年1月、新型コロナウイルスへの感染が全国に拡大した。練習も自粛を余儀なくされ、部活動停止期間に入った。ラグビーができない期間が続いたが、その状況を幹志朗はポジティブに捉えていた。「リフレッシュもできたし、頭も整理できました。自粛期間をとても有意義に使えたと思います」

多くの選手が悲観的に感じがちな自粛期間がプラスに働いた。チーム練習再開後はみんなとラグビーできる時間がとても楽しかった。毎日の練習を楽しめるようになったことをきっかけに、幹志朗は急速な成長を遂げる。「Aチームでも10番を任されるようになって、上級生に対しても自分の意見をはっきりと伝えるようになりました。プレーの質も高まったし、何よりラグビーが楽しくなりました」

 

 プレシーズン中もその成長速度が緩まることはなく、年末の花園ではスタンドオフとしてチームの牽引を任された。初めての花園だったが「緊張よりも楽しみの方が強かった」と振り返る。1年前、観客席から見つめていたグラウンドは、実際に立ってみると予想以上に大きかった。ずっと憧れていた舞台に自分が立っていることが感慨深かった。

 最も記憶に残っているのは、夏に大敗を喫した東海大仰星との準々決勝。ロスタイム18分にも及ぶ死闘が、全国の厳しさを教えてくれた。抽選の結果準決勝に進んだが、目標の日本一にはあと1歩届かず、大会3位で福岡に戻った。

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 翌シーズン、幹志朗はBKリーダーに選出された。花園で優秀選手に選出されたこともあり、今年は自分がチームを引っ張らないといけないと感じていた。どこかで「今年はいける」と感じている部分もあった。

 

 新チームとして初めて臨んだ強豪校との練習試合。石見智翠館を迎えたホームゲームだった。しかし、自信はあったものの試合の流れが掴めないまま時間が過ぎてしまい、得点を重ねられない。ディフェンスでも局面で隙を見せてしまい、接戦の末、僅差で敗れた。

 「根本的なラグビーに対する姿勢から変えて行かなきゃいけないと思って、それから1週間はリーダーやチームでのミーティングを繰り返しました」何ができていて、何がダメだったのか。改めて基本に立ち返り、自分たちの弱さにベクトルを向けた。

「自分がチームを勝たせられなかったので、10番同士の対決に負けました」潔く敗戦を振り返りながらも「負けたけど得るものが大きかったです」と前を向いた。

 

 心機一転臨んだ、全国選抜大会。早速、敗戦からの学びが生きた。準決勝以降、なかなか得点シーンを作り出せない時間帯で焦ることがなくなった。試合前日のミーティングで、相手ディフェンスの特徴や狙い目を細かく話し合えたのも大きかった。

「負けたら終わりっていう緊張感の中で勝ちきれたのは良かったと思います」念願の日本一を達成した大会直後の面談でも幹志朗は満足することなく、既に自分の次なる課題と向き合っていた。

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 そして、王者として臨んだ最後の花園予選。チームメイトは皆落ち着いていた。準決勝までは圧倒的な差を見せつけ、決勝戦へ。前半から自分たちのペースを掴んだ東福岡は、点数を重ねて引き離す。チームが益々勢いに乗る中、幹志朗のスキルも光った。

後半序盤、自陣10m付近からスペースを突いて抜け出すと、グラウンドを一直線に駆け抜け、ゴールポスト下にそのままトライ。試合のカギとなる時間帯にチームに勢いをもたらした。フォーカスに掲げていたディフェンスでも隙を見せることなく、80-0で完勝。全国大会予選全4試合を無失点で終えた。

 試合直後の幹志朗は「かなり調子良かったです」と一言。チームがやろうとしていたラグビーを自身が体現できたことで、強い手応えを感じていた。

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 絶好調で花園予選を終えた今も、幹志朗は初心を忘れてはいない。「いい試合でも勝ちきれないと意味がない」挫折を味わった春の石見智翠館戦から得た最大の学びだ。60分を通してのゲームメイクがチームの行方を左右することを痛感したあの日、幹志朗の肩には10番を背負う選手としての責任が重くのしかかった。

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 10番として、どう戦うのか。10番として、どうチームを導くのか。幹志朗の背番号に対するこだわりはブレない。

 

 高いポテンシャルを兼ね備えた仲間たちが、その実力を存分に発揮するためにも、幹志朗に与えられた役割は大きい。その揺るがぬこだわりを胸に、再び花園で最高の景色を見るため、高校最後の大舞台に挑む。

(敬称略)

 

文:ESC Academy

​画像:*本人提供

※一部他サイトからの引用含む

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ESC Academy 密着取材ドキュメント

楢本 幹志朗

SO

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〜 いい試合でも勝ちきれないと意味がない 〜

東福岡

Kanjiro Naramoto

10番のこだわり

Message

支えてくれる方々からのメッセージ

兄・鼓太朗さん

今までの全てをぶつけて楽しんで

 「幹志朗の試合見たけどすごいね。幹志朗、上手すぎじゃない?」というような言葉を最近よく聞きます。大学の同期や先輩からも、「幹志朗の兄」と呼ばれることが増え、弟関連のイジリも増えました。

そんな私ですが、昔は彼をとても過小評価していました。中学3年生の頃の幹志朗は、色々悩んだ末に東福岡高校に進学という道を選びました。東福岡高校は中学時代の各チームのエース格がこぞって進学し、その中でも試合に出れる人はごく僅かというラグビーエリート集団なので、幹志朗は中学3年の頃、福岡県選抜に入っていたものの到底花園で出れるような選手になれるとは全く思ってませんでした。

 しかし、高校2年生の花園で選手登録され、なおかつ「10」を背負って試合に出るという連絡をもらった時は、驚きと共に幹志朗を過小評価し過ぎてたことを反省しました。また、花園で優秀選手に選ばれたときも「本当に俺の弟なのか」とすら思いました。

 私は幹志朗の高校進学と同時に家から離れたため彼の成長を実際に感じることはできなかったのですが、並々ならぬ努力をしたことは容易に想像できます。高校ラストシーズンの花園を迎えるにあたって、緊張やプレッシャーなど、色々な思いを持って準備してきたと思います。高校生はラグビー人生においてはまだまだ通過点だとは思いますが、悔いの残らないように、今までやってきた全てをぶつけて花園という舞台を楽しんでほしいです。応援してます。

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チームメイト・朝倉達弥さん

ハーフ団として最後に最高のプレーを

 幹志朗は非常に明るく、誰に対しても対等に話しかけてくれます。とてもリーダー性に溢れていて、プレー中は凛々しい表情でチームをまとめてくれますが、学校では人が変わったかのように優しい表情でおもしろい一面もあります。

 

 小学生の時からお互いラグビーをしているため、幹志朗とも毎年交歓会などで試合をしていました。昔から一際目立つ選手で、ガッツポーズしながらトライされたことは今でも忘れません笑 中学に入り、福岡県選抜で初めてハーフ団を組み、全国優勝まで上り詰めたことが1番の思い出です。

 

 幹志朗は練習の際も周りの選手のことをよく見ているなと感じます。自主練習でも自分のキックの練習が終わったら、他の選手の苦手なプレーに対して、自分がお手本を見せて教えてあげたり、できるようになるまで付き添ってくれます。そんな所が周りから慕われる理由だと思います。

 

 幹志朗とハーフ団を組める最後の大会。ハーフ団として最高のプレーを見せられるように頑張ります。幹志朗がミスをしたときも、チームみんなで支えてあげます。春の選抜大会の時の東福岡と一味違う東福岡を見せられると思うので期待していてください。幹志朗の組み立てるゲームプラン、キックやパス、時にはランで会場を湧かせてくれると思うので是非注目してください!

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